飲食店・美容院には、女性の従業員も多くいます。彼女たちが出産・育児で休業するとなった場合には、出産育児給付金が使えるのですが、具体的にどんな内容なのかご存知でしょうか?
支援先の経営者からも質問が多いこの「育児休業給付金」。今一度、制度の概要を確認しておきましょう。
育児休業給付金とは?
別名「育休手当」とも呼ばれる、育児休業給付金。これは、一定の要件を満たした労働者に対して、給与に代わり一定額の給付金が支払われる制度です。給付金の出先は雇用保険からで、こどもが1歳になるまで、男女問わず受け取ることができます。
そもそも「育児休業(育休)」とは、原則1歳未満のこどもを養育するために仕事を休む(休業する)ことで、育児・介護休業法に基づいています。労働者から育児休業の申し出があった場合、雇用側はこれを拒むことはできません。
女性のみが取得できる「産前・産後休業(産休)」とは異なり、男性でも取得が可能です。
育児休業給付金の支給条件
育児休業給付金が支給される要件は、以下の3つです。
1.雇用保険に加入しており、1歳未満のこどもを養育している
育児休業給付金を申請できるのは、原則的に、こどもが生まれてから1歳になるまでの間。正当な理由がある場合は、その期間を延長することができます。
また、雇用保険に加入していること、そして雇用主である会社に対して育休を申請し、それが承認されていることが条件です。
2.育児休業を開始した日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は就業した時間数が80時間以上の)月が12か月以上ある
育休を取得する直前の2年間で、どれだけ働いたか?という要件です。正社員であれば、多くの場合で適用されますが、状況に応じて一部要件が緩和される場合もあります。
3.育児休業を開始した日から起算して1カ月ごとの期間中の就業日数が10日以下、または就業した時間数が80時間以下である
育休期間中の労働時間が、1カ月間で10日(または80時間)を超えていた場合は、給付金の対象外となります。やむをえず、育休中に仕事をする従業員もいるかと思いますが、ひと月あたりの労働時間がこの枠を超えてしまうと、育休手当がもらえなくなります。
そのほかの要件
上記3点が、育児休業給付金の主な受給条件ですが、そのほかにもケースに応じて要件が出ることがあります。
たとえば、雇用保険に加入している契約社員・嘱託社員の場合、「こどもが1歳6カ月まで(場合によっては2歳まで)に、労働契約が満了することが明らかでない」なども要件になります。あくまでも、雇用先の会社との契約が続くであろうということが条件だ、ということです。
育児休業給付金の支給期間
給付金の支給期間は、原則として「養育しているこどもが1歳になる前日まで」です。ただし、その子が1歳になる前に職場復帰した場合は、復帰日の前日までとなります。
育児休業給付金の支給金額
従業員にとって最も重要なのが、給付金の支給金額です。金額は、育休に入った直後の半年と、復帰前の半年では金額が異なっています。
・育休開始から180日目まで 賃金の67%
・181日目から復帰日前日まで 賃金の50%
事業主側が行う手続きについて
育児休業給付金の申請は、原則的に事業主側が行います。その方が手続きがスムーズだからです。従業員から出産の連絡や、育休の申し出があった場合は、以下のような手続きを行いましょう。
申請時に必要な書類
<事業主側が用意する書類>
・(初回のみ)育児休業給付金支給申請書
・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
・育児休業給付受給資格確認票
・賃金台帳/労働者名簿/タイムカードなど賃金額や就業状況を証明できる書類
<被保険者に用意してもらう書類>
・育児休業給付受給資格確認票
・(初回のみ)育児休業給付金支給申請書
・払渡希望金融機関指定届
・(初回のみ)母子手帳など育児の事実を証明できる書類
具体的な手続き
①事業主側が労働者から育休の申し出を受ける
②ハローワークに育児休業給付受給資格確認票・育児休業給付金支給申請書の交付を申請
③書類が届いたら、労働者が育児休業給付受給資格確認票・育児休業給付金支給申請書を記入
④労働者は必要書類を事業主側に提出
⑤ハローワークが指定する支給申請期間の支給申請日までに、必要な書類をすべてまとめてハローワークに提出
なお、育児休業給付金は、2カ月に1回の給付となります。そのため、追加で給付金を受け取る場合には、2カ月ごとに所轄のハローワークに追加申請を行う必要があります。
まとめ
今回は、育児休業給付金についての概要を解説しました。夫婦共働き世帯の増加や、止まらない少子化の影響もあり、育休への支援には、政府もこれまで以上に本腰を入れています。
また、育休を含めた労働環境の整備において、企業側の姿勢が問われるようになってきました。ライフステージの変化があっても長く勤めやすい会社であれば、優秀な従業員が集まりやすくなりますし、経営にとっても大きなプラスとなります。
男女問わず、育休を取得できる時代です。従業員が安心して働くことができるよう、育休が取得しやすい職場や制度作りに取り組むことが重要になってくるでしょう。
美容室・飲食店創業支援センターでは、京都・大阪・滋賀を中心にこれから開業される美容室や飲食店の支援をしております。開業に不安がある、相談に乗って欲しいという方はお気軽にご相談ください。
執筆者紹介
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美容室・飲食店創業支援センター 代表
株式会社Izanagi consultinG代表取締役
株式会社runO 代表取締役
セミナーBOOK株式会社 取締役
CCS,Ink. 取締役
税理士法人勤務時より融資関連業務に多く携わり、
2015年に美容室と飲食店の開業融資のみを専門に扱う美容室・飲食店創業支援センター設立。
2017年に美容室と飲食店向けコンサルティングサービスを展開する株式会社Izanai consultinG設立、代表取締役に就任。
資金繰り・資金調達・経営計画の策定を得意とする。
延べ200件以上の開業融資支援実績を有し、
開業時の資金調達は融資成功率100%の実績を有する(2022年12月現在)。
関西の美容室・飲食店開業融資支援のパイオニアとして知られる。
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