日本政策金融公庫(以下、政策公庫)は、中小企業や個人事業主が利用しやすい融資制度を提供する公的金融機関です。しかし、融資を受けるには、審査を通過することが必須になります。
その第一歩として、必要な書類を適切に準備し、内容を充実させることが融資成功の鍵となります。この記事では、日本政策金融公庫の融資審査で必要な書類を紹介、書類作成時のポイントについても解説します。
日本政策金融公庫の審査で必要な書類一覧
融資審査を申し込む際には、さまざまな書類を準備しなくてはいけません。まずはじめに、融資を申し込むすべての人に共通する必要資料を紹介します。
申込時に必要な書類
・借入申込書
融資審査の申込書になります。日本政策金融公庫が指定するフォーマットがあるので、こちらからダウンロード、もしくは各支店の窓口から取り寄せます。裏表両面あるので、裏面も忘れずに記入しましょう。
・借入申込書のダウンロード
・最寄りの窓口を検索
この書類には、希望する融資額や用途、現在の借入状況などを書き込んでいきます。
・創業計画書
融資審査の重要な判断材料となる書類です。新規創業の場合も既存事業の場合も必須です。
創業者の経歴・保有資格、創業理由、事業概要(事業内容、ターゲット、競合との違い)や、資金使途(借りたお金を何に使うのか)、売上・利益計画(1~3年分)、リスク対策などを書き込みます。
申込書とは違って様式が指定されているわけではないのですが、日本政策金融公庫では、創業計画書のフォーマットを用意しています。これから創業計画書を作るという方は、このフォーマットに沿っていくと比較的楽に作れます。
また、業種別に「記入例」も公開されていますので、参考にすると良いと思います。
<各業種別の創業計画書記入例>
・美容業
・見積書や工事請負契約書
設備資金の借り入れを申し込む際に必要になります。設備資金というのは、土地や建物、業務上必要な機器(厨房設備やシャワー台)、パソコンなどの設備を購入するのに必要なお金のことです。
この見積書や契約書を出す理由は、設備資金として借りた融資金が、別の用途に使われていないかを確認するためです。30万円を超える設備を購入する際には、必ず見積書を取りましょう。融資申し込みまでに見積書が間に合わない場合は、購入する設備のカタログなどを印刷して持ち込んで提出でも大丈夫ですが、見積書・契約書の方が望ましいです。
また、見積書には有効期限があるので、期限が切れていないかも、提出前にチェックしましょう。
・許認可証・資格や免許の証明書
飲食店は、開業するにあたって「飲食店営業許可証」が、美容師として開業sるうのであれば「美容師国家資格」が必要になりますが、こうした業務上必須な資格の証明書も、融資の申込時に提出します。こちらはコピーで大丈夫です。
・本人確認書類
免許証やパスポート、マイナンバーカードなどのコピーです。
・履歴事項全部証明書(登記簿謄本)の原本と定款のコピー(法人のみ)、開業届(個人事業主のみ)
法人を立ち上げている場合は、履歴事項全部証明書(登記簿謄本)の原本、そして定款のコピーも提出します。
履歴事項全部証明書は、法務局の窓口で入手できます。定款は、会社設立時に受け取った控えがあるはずです。紛失した場合は、設立登記を行った法務局に行き、閲覧申請して入手しましょう。
個人事業主の人は、事業を開始する際に税務署に提出した「開業届」を持参します。失くしたという人は、税務署でコピーの請求をして用意しましょう。
面談時に必要になる資料
日本制作金融公庫「創業融資」の申し込みが済んだら、次に担当者による面談というステップがあります。その際に必要になるのが、次の資料です。
・預金通帳
普通預金であれ定期もしくは積立預金であれ、預貯金がある場合は、直近6カ月以上の明細が書かれた通帳の原本を持参します。
また、水道代や電気ガスといった光熱費の支払い、住宅ローンやクレジットカードの引き落としがあるのであれば、その引き落とし口座の通帳を提出します。
基本的には、動かしている口座すべての通帳を持参すると思っておきましょう。ネットバンキングで通帳がないという場合は、明細を印刷します。また、通帳は事前に記帳を済ませておきましょう。
・勤務時の源泉徴収票、または確定申告書直近2年分
前職が会社員だった人は直近2年分の源泉徴収票を、確定申告を行っていた人(会社員でも個人事業主でも)の場合は、直近2年分の確定申告書を提出します。
確定申告書については、税務署やe-Taxで取得します。源泉徴収票は、勤め先に再発行を依頼します。源泉徴収票の再発行が難しいという人は、日本政策金融公庫の担当者に事前に相談しましょう。場合によっては、給与明細でOKということがあります。
・ローンなどの返済予定表
住宅ローンやカーローン、学資ローンなどの負債がある人は、返済予定表を持参します。現在借りているお金をどのように返済する予定なのか、事業を運営していても無理のない返済計画なのかを確認する資料になります。
返済予定表が手元にないという人は、借り入れている金融機関に申請して入手しましょう。なお、消費者金融からの借り入れがある人は、審査通過が難しくなりますので、可能な限り返済してから融資を申し込むようにしましょう。
・固定資産税課税明細書、固定資産税の領収書
不動産を所有している人は、固定資産税を支払っていると思いますので、毎年4月~5月ごろに自宅に郵送されてくる「固定資産税課税明細書」と、それを支払った証明となる「領収書」を提出します。
不動産を複数持っている人は、そのすべてを提出する必要があるので、準備しておきましょう。
・不動産の賃貸借(予約)契約書又は、物件の説明書
テナントなど、場所を借りて店舗を開始する場合は、その物件の賃貸契約書と物件の説明書を提出します。融資を申し込む時点で、まだ賃貸契約が結べていないという人は、予約契約書と物件説明書を準備してください。
既存事業者の場合、過去1~3年分の確定申告書や決算書を提出します。これにより、経営状態や収益性を確認されます。
・本人確認書類(再度)
申請時に提出した本人確認書類と同じものを、面談時にも持参します。
まとめ
ここまでで、融資の申込時、そして面談の際に必要な書類を紹介しました。必要書類が不十分だったり、記載内容に不備がある場合、審査が遅れるだけでなく、融資が断られるリスクも高まるので注意しましょう。
特に、創業計画書の適正性(具体的かつ現実的な数字が書かれているか)、そして通帳(自己資金の有無や、支払い能力の有無)については、かなり注意してチェックされます。
必要書類は多岐にわたるので、準備期間を十分に取っておくことが大切です。また、創業計画書や、書類の準備に不安がある人は専門家のサポートを受けることも考えましょう。
執筆者紹介
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美容室・飲食店創業支援センター 代表
株式会社Izanagi consultinG代表取締役
株式会社runO 代表取締役
セミナーBOOK株式会社 取締役
CCS,Ink. 取締役
税理士法人勤務時より融資関連業務に多く携わり、
2015年に美容室と飲食店の開業融資のみを専門に扱う美容室・飲食店創業支援センター設立。
2017年に美容室と飲食店向けコンサルティングサービスを展開する株式会社Izanai consultinG設立、代表取締役に就任。
資金繰り・資金調達・経営計画の策定を得意とする。
延べ200件以上の開業融資支援実績を有し、
開業時の資金調達は融資成功率100%の実績を有する(2022年12月現在)。
関西の美容室・飲食店開業融資支援のパイオニアとして知られる。
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