物価高、そして人件費の高騰により、多くの飲食店経営者は安定的な経営に頭を悩ませています。こうした市場環境に対応するひとつの方法として、メニューの値上げが挙げられますが、これもここ数年でほとんどの飲食店が値上げをしているはずで、経営改善の大きな一手とは言えなくなってきました。
そこで考えられるのが、「回転率」をもっと引き上げる施策です。しかし実際には、「単価を上げると長居される」「回転を意識すると単価が下がる」…というジレンマを抱えている経営者も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、回転率と客単価の「両方」を引き上げる具体的な方法を紹介していきましょう。
「回転率」と「客単価」とは

店舗ビジネスを経営するのに必ず知っておかなくてはいけない考え方……それが「回転率」と「客単価」です。
「回転率」とは、1つの席が1日に何回利用されるかを示す指標。例えば、10席のお店で1日30人のお客様が来れば、回転率は3.0になります。
「客単価」は1人のお客様が1回の来店で使う平均金額の事です。
店舗経営において売上金額を算出する際には、「売上=客数 × 客単価」という計算式を使います。そのため、売上を上げようと思ったら、回転率をアップさせて「客数」を増やすか、一人当たりの使う金額を高めて「客単価」をアップさせる必要があります。
一般的には、「メニューの金額を安くすることで回転率を上げる(=大衆居酒屋的なモデル)」もしくは、「メニューの金額を高くして客単価を上げる(=高級レストラン的なモデル)」のどちらかを選択する必要があるかのように思われています。
「メニュー設計」で回転率と客単価の同時アップも目指せる

ただし、意外かもしれませんが、メニュー構成の工夫によって回転率と客単価を両立させることも可能です。キモとなるのは回転率の改善です。
例えば、次のような施策です。
注文が早く決まるメニューの見せ方
→ 写真付きメニュー/人気ランキング/セットメニューで迷わせない。
高粗利&調理時間が短い商品を主力にする
→ 利益率も高く、提供も早い。代表例は「パスタ」「スープ」「トースト」など。
サイドメニューで自然に単価を上げる
→ 「+300円でドリンクセット」「+100円で大盛り」などで、心理的ハードルを下げつつ客単価UP。
これにより、「悩まず注文」→「素早く提供」→「満足感のある会計」となり、滞在時間は短く・満足度と単価を高くすることができます。
注文・会計・配膳の効率化
また、オペレーションの効率を改善することも回転率向上につながります。それだけではなく、オペレーションを効率的にすると、スタッフの負担軽減にも繋がります。
タブレット注文・セルフオーダー導入
→ 注文時の待ち時間を短縮、追加注文の機会も増加。
セルフ会計(レジ連動のセルフ精算)
→ 会計待ちによる混雑を防ぎ、次のお客様をすぐに案内可能に。
省スペース配膳(1トレーで複数テーブル対応)
→ スタッフの移動を最小化し、提供スピードを維持。
こうした施策は特に回転率向上に貢献しますが、同時にお客様のストレスも軽減されるという、副次的な効果もあります。
まとめ

「回転率」と「客単価」を上げるための方法は、真逆の方向に見えて、実は工夫次第で両立することができます。
迷いにくいメニュー構成(時短×単価UP)
注文と会計の効率化(回転率UP)
「お客様の満足を保ちながら、テンポよく流れる仕組み」を構築することが大切なのです。単にメニューを値上げするのではなく、効率化と工夫次第では経営改善の余地はまだまだあります。ぜひ、あなたのお店にも“ちょっとした改善”を取り入れてみてください。
執筆者紹介

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美容室・飲食店創業支援センター 代表
株式会社Izanagi consultinG代表取締役
株式会社runO 代表取締役
一般社団法人美容フリーランス協会 理事
CCS,Ink. 取締役
税理士法人勤務時より融資関連業務に多く携わり、
2015年に美容室と飲食店の開業融資のみを専門に扱う美容室・飲食店創業支援センター設立。
2017年に美容室と飲食店向けコンサルティングサービスを展開する株式会社Izanai consultinG設立、代表取締役に就任。
資金繰り・資金調達・経営計画の策定を得意とする。
延べ200件以上の開業融資支援実績を有し、
開業時の資金調達は融資成功率100%の実績を有する(2022年12月現在)。
関西の美容室・飲食店開業融資支援のパイオニアとして知られる。
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