開業したばかりの飲食店や美容室では、思ったように資金が回らず「次の入金までどうしよう…」という悩みに直面することがあります。そんなとき、経営を支える手段の一つが「つなぎ融資」です。
そこで今回は、飲食店や美容室経営における「つなぎ融資」の基礎知識と、活用ポイントをわかりやすく解説します。
そもそも「つなぎ融資」とは?
「つなぎ融資」とは、将来的に確実な入金が見込まれているが、目先の資金が足りない場合に利用できる、短期間の融資のこと。
一般的によく使われている「つなぎ融資」は、住宅購入にまつわるものが多いのですが、飲食店・美容室をはじめとした中小企業が活用できる「つなぎ融資」は、それとは別物です。
基本的に短期での返済が前提で、借入金の用途や返済原資が明確であることが条件になっています。また、通常の融資よりも審査がやや緩く、速やかに融資が受けられるようになっています。ただし、金利は通常の融資よりもやや高めとなっています。
つなぎ融資を活用するケース
飲食店や美容室では、国や自治体の補助金・助成金を活用することも多いですが、これらの資金は事後精算が基本です。たとえば「小規模事業者持続化補助金」は、事業完了後の報告・審査を経て入金されるため、入金までに半年〜1年ほどかかることもあります。
この間に、印刷物制作や店舗改装費などの支出が発生する場合、「つなぎ融資」で立て替えておけば、キャッシュフローを維持できます。公庫や金融機関に相談すれば、補助金の採択通知を根拠として、つなぎ融資に対応してくれるケースもあります。
このほか、コロナ禍のような想定外の事象による一時的な資金繰りの悪化や、何らかの事情による一時的なキャッシュ(手元の現金)の不足などにも、つなぎ融資を使うことができます。
活用のメリットと、活用時の注意点
つなぎ融資を活用する大きなメリットは、当然ながら「経営の安定化」です。
短期的に資金を回復することができるので、利益が出ているにも関わらず資金ショートが原因で起きる「黒字倒産」を避けることができます。
また、金融機関との関係構築にも一役買うことがあります。融資する側としては「返す見込みがある」と判断しているからこそ融資をしているので、金融機関からの信頼は得ているものという前提で、通常の融資よりも高金利のつなぎ融資を活用してくれた企業として評価されることになります。つなぎ融資をきっちりと返済したあかつきには、金融機関との関係も深くなっているはずです。
もちろん、利用に際しての注意点もあります。
まずは融資期間が短く、早期返済が求められる点。そしてなにより金利と手数料が高額だという点です。また、融資審査が比較的緩やかで、パッと借りられてしまう反面、つなぎ融資に依存した経営はもちろん「健全な経営」とは言えません。
便利な融資である一方、頼りすぎには注意が必要です。
まとめ
つなぎ融資は、売上や補助金の入金を待っている間の一時的な資金不足や、不測の事態に直面したときには非常に有効な手段です。特に最近は、補助金を活用する企業が増えているので、こうした手段があることも知っておいたほうが良いでしょう。
ただし、つなぎ融資はあくまでも「一時的な対処療法」に過ぎません。つなぎ融資の返済も滞ってしまったとなると、いよいよ倒産を考える段階に入っていますので、慎重に活用しましょう。
執筆者紹介

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美容室・飲食店創業支援センター 代表
株式会社Izanagi consultinG代表取締役
株式会社runO 代表取締役
一般社団法人美容フリーランス協会 理事
CCS,Ink. 取締役
税理士法人勤務時より融資関連業務に多く携わり、
2015年に美容室と飲食店の開業融資のみを専門に扱う美容室・飲食店創業支援センター設立。
2017年に美容室と飲食店向けコンサルティングサービスを展開する株式会社Izanai consultinG設立、代表取締役に就任。
資金繰り・資金調達・経営計画の策定を得意とする。
延べ200件以上の開業融資支援実績を有し、
開業時の資金調達は融資成功率100%の実績を有する(2022年12月現在)。
関西の美容室・飲食店開業融資支援のパイオニアとして知られる。
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