起業・創業の第一歩を踏み出す際に、多くの起業家が頼るのが「日本政策金融公庫」の創業融資です。店舗を持つには数百万円~数千万円単位で資金が必要になりますが、ほとんどの人がそれを自己資金で用意することはできません。となると、金融機関から開業資金を融資してもらうことになるのですが、その第一候補が「日本政策金融公庫」になります。
民間の金融機関(銀行や信金)よりも低金利、かつ融資へのハードルが低いので、非常に利用しやすいのが特徴です。融資へのハードルが低いとはいっても、審査を通るためにはしっかりと準備が必要です。なかでも、審査の際に関門となるのが「面談」です。
そこで今回は、日本政策公庫の面談必勝マニュアルを紹介していきます。
面談の心得1:担当者が重点的に確認する項目を知る
審査に必要な「借入申込書」「創業計画書」「収支計画書」など、必要な書類を忘れずにそろえておきましょう。
<各書類のダウンロード先>
・借入申込書
・創業計画書
・収支計画書
日本政策公庫の「創業融資」では、創業計画書に独自のフォーマットを準備していますが、その中でも特に注意して見られるのが、経営者の略歴を記載する項目と、事業の見通しについて記載する項目です。
<経営者の略歴>について
審査担当者が最初に確認するのが、開業に至るまでの個人の経歴です。学校を卒業してから、どんな事業会社に従事してきたのか。ポジションはどうだったのか、どんなスキルを持っているのか、といった略歴を自分自身で説明する必要があります。
ここでは、開業予定事業に関連する業務経験が十分かどうか、開業予定立地になじみがあるか、などの聞き取りがあるでしょう。
特に美容室の場合は、月別売上や既存顧客リストがどれぐらいあるのか。飲食店の場合は、直近で働いていた店の売上や、常連になってくれる可能性のあるお客様の人数などの情報は、重要な指標になります。もし、これらを証明できるのであれば、ぜひ一緒に提出しましょう。
<事業内容>について
開業を予定している事業の内容も、審査においては非常に重要な項目のひとつです。上手くいかないと分かっている事業にお金を貸す人は誰一人いません。ここでは、担当者に対して「この事業は上手くいきそうだ」と思ってもらう必要があります。
立地、顧客の具体的なターゲット層(性別・年齢・活動エリアなど)、他社との差別ポイント、想定する客単価、原価率、利益率、月の平均売上予測……これらの数字について、具体的に計画していき、説明できるようにします。
ここでは具体性が非常に重要なので、現実的かつ利益がきちんと出るような事業計画を入念に練っておきましょう。
また、創業計画書フォーマットの中に記載はないのですが、集客戦略を具体的に語れるようにすることも、かなり重要なポイントです。「SNSを使って集客します!」と言うだけでは足りません「インスタグラムを使って、若くて見栄えのするメニューを好む層にアプローチをします」といった、アプリ名まで入れるほど具体的な計画が好まれます。
<設備資金・運転資金>について
創業計画書フォーマットには、設備資金(設備投資にかかる金額)や運転資金について書く欄があります。この金額に妥当性があれば特に何も言われることはありません。
ただし、審査担当者が「こんなに設備投資にお金をかけて良いのだろうか?」と思った場合には、「融資金額が減ったらどうしますか?」という風に聞かれることもあります。
融資金額が希望通りにいかなそうな雰囲気が漂ってきたら、だいたいの人は焦って「それは無理です(希望額満額じゃないと厳しいです)!」などと言ってしまうことがあるのですが、それは絶対にやめましょう!
<融資条件の確認>
貸付期間(返済年数)、金利の利率、金利据え置き期間の有無、返済口座、口座引き落とし日などの確認を行います。
金利の利率については、日本政策公庫側が決定しますので、その理由などの説明が行われます。返済期限については、こちらの希望が適用されます。特に理由がないのでしたら、可能な限り長い期間借りておきましょう。
「金利据え置き期間」は耳なじみがないかもしれません。この期間中は、元本の支払いはせずに金利だけ返済するというものです。創業融資を受けてすぐというのは、まだ店舗が開業されていないケースがほとんどです。そのため、利息だけ支払ってなるべく返済額を少なくしておくという事です。金利据え置き期間は、半年間~1年間で設定するのが一般的です。
面談の心得2:想定される質問への回答を練習しておく
融資審査の面談は、いわばあなたの事業計画を審査担当者にプレゼンする場です。「この事業計画はしっかりしているな」「この人は信用できそうな人物だな」と、担当者に印象付けることが重要になります。
事業計画や返済計画について数字を具体的に用意しておくことはもちろん、その内容を自ら説明しなくてはいけません。
審査担当者が重点的に質問する内容は、先ほど説明しました。この内容について、特に注意して、答える練習をしておきましょう。
〈想定質問集〉
- 創業の動機を教えてください。
- 過去の経歴や職歴を教えてください。取得している資格はありますか?
- 商品、サービスはどのようなものですか?
- 競合他社との差別化ポイントは?
- 必要な設備資金や運転資金はいくらですか?
- 自己資金の調達方法はどのようなものですか?貯蓄はありますか?
- 創業1年目の売上高と売上原価、利益はいくらですか?
- 事業が軌道に乗った場合に想定される売上高は?
ほかにも、信用情報(住宅ローンやカーローンの有無)などを聞かれることもありますので、ローンがある方は借入残高も確認しておきましょう。
当日の服装はスーツがおすすめ
面談には、スーツで行くのが無難でしょう。飲食店や美容室での創業を考えている人は、普段スーツに慣れていないかもしれませんが、当日だけ頑張りましょう。スーツでなくても清潔感のある服装(オフィスカジュアルなど)を心がけ、相手に失礼のないようにします。
まとめ
日本政策公庫の面談の時間は、おおよそ45分~1時間程度です。この短い時間の中で、担当者の信頼を勝ち得るためにも、事前準備は入念に行いましょう。
とは言っても、極度に緊張する必要はありません。日本政策公庫という組織は、中小企業や小規模事業者の支援を目的に立ち上げられた、公的な金融機関です。そのため、基本的には中小・小規模事業者に対して積極的に融資を行うというスタンスです。
面接担当者は「審査してやる」というよりも、「一緒に作戦を考えましょう!」という姿勢であることが多いので、準備をしっかりとしたあとは、リラックスして面談に臨みましょう。
それでも「面接が苦手だ」「経験がないので心配」「最大限、その日に備えて準備したい」という人は、専門家のアドバイスを受けるのもおすすめです。創業計画書の内容を第三者目線でチェックしてくれますし、自分では気付かなかった自社の強みを提案してくれます。また、面接対応の練習相手としても活用できるので、不安な人はぜひ経験豊富な専門家に頼ってみましょう。
美容室・飲食店創業支援センターでは、京都・大阪・滋賀を中心にこれから開業される美容室や飲食店の支援をしております。開業に不安がある、相談に乗って欲しいという方はお気軽にご相談ください。
執筆者紹介
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美容室・飲食店創業支援センター 代表
株式会社Izanagi consultinG代表取締役
株式会社runO 代表取締役
セミナーBOOK株式会社 取締役
CCS,Ink. 取締役
税理士法人勤務時より融資関連業務に多く携わり、
2015年に美容室と飲食店の開業融資のみを専門に扱う美容室・飲食店創業支援センター設立。
2017年に美容室と飲食店向けコンサルティングサービスを展開する株式会社Izanai consultinG設立、代表取締役に就任。
資金繰り・資金調達・経営計画の策定を得意とする。
延べ200件以上の開業融資支援実績を有し、
開業時の資金調達は融資成功率100%の実績を有する(2022年12月現在)。
関西の美容室・飲食店開業融資支援のパイオニアとして知られる。
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