美容室や飲食店の店舗開業から1年。「夢をかたちにした」という高揚感も落ち着き、現実的な数字と向き合うフェーズに入る頃です。開業してすぐの頃は、融資を受けていたり自己資金がまだ余っていたりと、まだ余裕がありますが、1年経過時点での経営状況には大きな差が生まれます。
今回は、開業1年後に直面しがちなリアルな数字と課題を整理し、次のステップに活かすための視点をご紹介していきます。
経営が軌道に乗るまでの期間:開業後1年〜2年以内
日本政策金融公庫の資料によると、創業した美容室・サロンの経営が軌道に乗るまでにかかる期間は「1年超2年以内」が33.8%でした。
一方、美容室・サロンは全国で25万軒、美容師も52万人いると言われていて、その数はコンビニエンスストアよりも多いことから、競争が熾烈な業界でもあります。そのため、無計画に創業した店舗はあっという間に淘汰されていきます。
とある調査※によると、飲食店の経営が軌道に乗るまでの期間は「4カ月〜6カ月程度」が27.9%、「7カ月〜1年程度」が27.3%という調査結果が出ています。 回転率もあって、美容室よりも数ヶ月早い段階で経営を軌道に乗せることができますが、それでも数ヶ月は我慢の期間が続くことが予想されます。 ※2023年ゼネラルリサーチ調査
売上のリアル:7割以上が、想定した売上未達成
開業前に立てた売上計画。理想的な客単価や回転率で試算したものの、実際には7割程度に落ち着くケースが多く見られます。例えば、1日40人来店×単価3,000円=月売上360万円と想定していた美容室が、実際には月250万円程度というケースも。これは認知拡大の遅れや、リピート率の低さなどが要因です。
飲食店も同様に、ランチ需要の落ち込みや天候による来客数の変動など、予測しきれない要素が多く、売上は安定しづらい傾向にあります。また、飲食店を創業した人からは「想像以上に経費がかかった」という声が多く聞かれるため、事業の見通しは「売上少なめ」「経費多め」で計画しておくことがおすすめです。
創業から数カ月〜1年間は、経営が不安定になりがちな時期です。「数字が届かない」と焦るのではなく、定点観測を続けて改善ポイントを明確にしていきましょう。
経営者の悩み:「集客」と「リピート率」が最大課題
1年経過時点で多くの経営者が抱えるのが「集客」と「リピート率」の課題です。来店数が伸び悩んでいるのか、来ても続かないのかで、対策は大きく異なります。前者であれば販路や認知拡大の見直し、後者であればサービス品質や接客、予約の導線を見直す必要があります。
美容室の場合、新規顧客の3カ月以内リピート率は30%、既存顧客で70%だと言われています。飲食店は形態によってリピート率は異なりますが、カフェの場合は30%〜40%、居酒屋だと70%程度と言われています。この平均値よりもリピート率が下回る場合には、オペレーションや価格、サービス品質などに課題がある可能性があるので、見直した方が良いでしょう。
まとめ
開業1年目は、理想と現実のギャップに戸惑う時期です。しかし、そのギャップこそが、次の成長を生むヒントになります。思い描いていた「成功像」と照らし合わせながら、売上・支出・集客の数字を可視化し、改善の仮説と検証を積み重ねる姿勢が重要です。
「うまくいかない=失敗」ではなく、「うまくいかない=気づきのチャンス」と考えて、焦らず、諦めず、数字と丁寧に向き合っていきましょう。
執筆者紹介

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美容室・飲食店創業支援センター 代表
株式会社Izanagi consultinG代表取締役
株式会社runO 代表取締役
一般社団法人美容フリーランス協会 理事
CCS,Ink. 取締役
税理士法人勤務時より融資関連業務に多く携わり、
2015年に美容室と飲食店の開業融資のみを専門に扱う美容室・飲食店創業支援センター設立。
2017年に美容室と飲食店向けコンサルティングサービスを展開する株式会社Izanai consultinG設立、代表取締役に就任。
資金繰り・資金調達・経営計画の策定を得意とする。
延べ200件以上の開業融資支援実績を有し、
開業時の資金調達は融資成功率100%の実績を有する(2022年12月現在)。
関西の美容室・飲食店開業融資支援のパイオニアとして知られる。
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